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高野文子

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「なんてこった。」

 

陰影。漂う不穏な空気。
独特の構図、カメラアングル。
意味ありげに描かれるコマの数々。
これは、主人公にまずいことが起きるんじゃないか。
いわゆる「フラグ」を感じる。

 
ところが予想はことごとく外れる。
ストーリーの先も読めない。
結局、はっきりしないまま話は終わる。
しかし、言葉にできないだけで、ある種の感情が残る。

 
最初から読み直す。感情はさらに膨れ出す。
コマの役割に気づく。人物の動きの意味がわかってくる。
結果、冒頭の言葉を発してしまう。
漫画の結末に対してではなく、作者の感性と表現への執念に対して。

 
日々、いかに自分が凡庸な演出を受け入れてしまっているか、
いかに自分のセンサーが鈍っているかを突きつけられる。

 
歌人の穂村弘が自身の憧れの人たちと対談する「あの人に会いに」という本に高野文子が登場する。
本人がどういう姿勢で漫画を描いていたか、ほんのちょっぴり明らかになった。

 
その本のまえがきにある、対談した人たちに向けた穂村弘の言葉。
「目の前に奇蹟のような作品があって、この世のどこかにそれを作った人がいる。その事実があったから、つまり、あなたがいてくれたから、私は世界に絶望しきることなく、生き延びることができました。本当にありがとうございました」

 

おおげさじゃなく、自分も本当にそうだったと思う。