ロバート秋山のクリエイターズ・ファイル

初めて見たのは書店で配られていたフリーペーパーhonto+の中の連載記事でした。真面目な本の中で真面目にクリエイターを紹介していくという体裁。しかし登場するクリエイターは明らかにロバート秋山の扮装なんで「一体なんなんだこれは」と。とにかくネタばらしも己ツッコミもせず一貫して大真面目な記事に笑いがこみ上げてきました。
所謂情熱大陸やプロフェッショナルのようなクリエイターをカッコよく見せるドキュメンタリーのパロディなんですが、その業界っぽく見せる秋山のセリフのリアリティさとクオリティが抜群なんです。驚くことに事前にその業界について下調べすることはあまりなく、セリフはほとんどその場のアドリブだそう。これぞ憑依芸。
やはりすぐにメディアに取り上げられて話題になり、デザイナーのYOKO FUCHIGAMIはそのキャラのままで番組出演をするほどになりました。これまでのクリエイターをまとめて紹介するパルコでの巡回展も開催され大盛況のようです。
クリエイターを持ち上げる型にはまった番組構成を笑いに変えている、だけなら毒はないんでしょうけど、クリエイターと呼ばれる人たちに対して「いやいや冷静に見るとすごいこと言ってますよこの人」という皮肉も混じっているのが秋山の悪さですね。褒める意味で。
クリエイターズ・ファイルの冊子版の最後のページに辞書風に解説があります。
クリエイター[Creator]
①造物主。創造者。創作家。
②創造的な仕事をしている人。
③極論を言いたがる人。
荒木経惟


荒木経惟 写狂老人A
2017年7月8日(土)—9月3日(日) 東京オペラシティ アートギャラリー
荒木経惟 センチメンタルな旅 1971-2017-
2017年7月25日(火)—9月24日(日) 東京都写真美術館
展覧会で作品をどういう風に見ればいいかわからない。と言われることがあります。感性とかセンスの問題が余計に難しくさせているかもしれませんが、これは単純に自分が持っている情報量で決まることです。色や構図の効果を知っている人はその視点から絵画を分析できるし、美術史の文脈がわかっている人は、現代アートを見てなるほどこれは○○のオマージュだなとわかる。海外の作品で、その国の歴史や文化がわかっていないとピンとこないというのはしょうがないことです。私も当然自分が知っていることでしか判断できないので「うーん、わからん!」というものだらけです。ですがいい作品というのは懐も深いので自由に解釈していいんじゃないかな、と考えています。いつも好き嫌いでしか見ていないという人は、次は自分の得意分野の視点から見てみると発見があるかもしれません。世の中の何にも関係していないアートというのは無いので。
写真家の展覧会では、視点であったり視覚による認識を意識しながら見ています。ところが荒木さんの作品はそういった冷静な分析なんかを突き抜けて揺さぶりが来ます。荒木さんが何度も発表する陽子さんや猫のチロ。そのストーリーを多くの人が知ってしまっている。荒木さんの作品は見る人にとっても「私写真」の一部と化してしまった。こうなるとやっぱり泣くしかないわけです。
同時に開催されているふたつの展覧会のチラシを並べてみました。荒木さんと陽子さん。カラーとモノクロ。縦と横。申し合わせたような組み合わせ。ジーンと来ますね。
ブリューゲル「バベルの塔」展

2017年4月18日(火)—7月2日(日)
東京都美術館
ひとつの絵画を主役に据えた展覧会。バベルの塔はそれぐらいインパクトのある作品ということでしょう。
展示は3フロアに分かれていて、まず16世紀ネーデルラントの彫刻や絵画が紹介されます。
フロアを上がるとブリューゲルに大きな影響を与えた人気作家、ヒエロニムス・ボスの作品が登場。のちのシュルレアリスムを思わせるような奇怪な作風は多くのフォロワーを生み、ブリューゲルもボスを模倣したたくさんの版画を制作しています。
そして最後のフロア。待望のバベルの塔が出現します。
絵のサイズはそんなに大きなものではないんですが、超々緻密で圧倒されます。Retinaディスプレイかなと。ルーペで見ながら描いたんじゃないかというぐらいの細かさ。人物が1400人描かれていて、米粒より小さいのに何をしているかわかるという。近寄っても見えませんでしたけど。最後に東京藝大協力による300%に拡大された複製画が展示されていて、これはありがたい、と。
ブリューゲルはファンタジーの世界を描いているからか、影響を受けたアニメ作家・漫画家が多いようです。
「AKIRA」の大友克洋監督。ここまで描くかという緻密な描写で知られています。この展覧会にあわせてバベルの塔の内側を描いた「INSIDE BABEL」を制作しています。入口横ロビーに展示されていますのでお見逃しなく。
宮崎駿監督。ラピュタは見るからにバベルの塔ですね。ナウシカの原作漫画の絵はブリューゲルの版画っぽい。本人もブリューゲルが大好きだと語っています。バベルの塔は人間の生きる力を描いた絵だという人がいるが、違う。人間とはいかに愚かなものかというのを描いている。だから好き、なんだそうです。
それと三浦建太郎。ベルセルクの魔物たちはまんまボス&ブリューゲルのオマージュでしょう。「ギョエー“蝕”やん」と思いながら見て回りました。
バベルの塔をモデリングした3DCG映像もかなり凝っていてなかなかにエンターテインメントな展覧会でした。ブリューゲルの画題は重いものもありますが、何かしらユーモラスなのでこういうノリが合うのかもしれないです。
ニューヨークが生んだ伝説 写真家 ソール・ライター展

2017年4月29日(土)—6月25日(日)
Bunkamura ザ・ミュージアム
ロバート・フランクと同世代の写真家ソール・ライターの展覧会。フランクの映画と同じくBunkamuraで開催されています。
ソール・ライターは1960-80年代、Harper’s BazaarやElle、Vogueなどファッション誌で活躍しましたが、1981年、自由な創作活動に没頭するため商業用スタジオを閉鎖。しばらく表舞台から姿を消します。2006年にシュタイデル社からEarly Colorという写真集が出版され、大きな反響を得て再び評価され始めました。
ボナールを敬愛し、毎日絵を描く画家でもあったソール・ライター。その写真には絵画的な構図が見て取れます。初めて見る写真ばかりでしたが一目で「いいな」と思えました。ライターは日本の美術からとても影響を受けたらしく浮世絵の独特な視点や斬新な構図を思わせる写真が多かったからかもしれません。これから日本でもっと人気が出てくる気がします。
写真とともに彼の言葉がいくつか展示されています。
“It is not where it is or what it is that matters but how you see it.”
「重要なのは、どこで見たとか、何を見たとかということではなく、どのように見たかということだ。」
Don’t Blink ロバート・フランクの写した時代

写真家ロバート・フランクのドキュメンタリー映画です。東京のBunkamuraル・シネマでは4/29から上映されています。
撮るのは好きだが自分が撮られるのは嫌だという写真家は多いです。ロバート・フランクはさらに大のインタビュー嫌いと聞いていたので、どうなんだろうと。
結論から言うと「こんなにさらけ出すんだ」というぐらい正直に素の自分を見せて、本当のことを語ってくれています。
撮影スタッフとも親密で、監督のローラ・イスラエルへの信頼が表れています。フランクと写真集を何冊も制作しているゲルハルト・シュタイデルは「この映画はローラだから撮れたし、彼女としか彼は映画を作らなかっただろう」と語っています。
描かれるのは、絶え間ない創作活動、仲間たち、ニューヨークとマブー、写真から距離をおき映像表現へ移っていった訳、パートナーのこと、そして最愛の子どもたちとの別離、終わりなき創作活動、、、
「写真とは」という話が答えのない問答のように思えるのはそれが写真家にとって人生そのものだからだとわかりました。言葉で語り尽くせないたくさんの思いを表現するには。運命との向き合い方は。
“Stand up, Keep your eyes open, Don’t shake, Don’t blink”
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