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白い犬 梅佳代

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「はじめのころは木の枝で撫でとったけど、最後のほうは友達やったと思う。」

 

 

デビュー作「うめめ」から10年。梅佳代作品には何度も登場するあの「白い犬」の写真集が発売されました。

梅佳代さんと言えば笑える写真という印象。しかしこの「白い犬」はなんでしょう。なんだかとてもセンチメンタルです。

 

弟が野球部の寮からひろってきた犬「リョウ」。思わず吹き出してしまうシーンでもなく、めずらしい行動の瞬間でもなく。家の中や自然の中にいる日常のリョウの姿が続きます。梅佳代さんならではの面白い切り取り方ではあるんですが、いつもの笑える写真ではありません。冒頭に紹介した帯の言葉が頭に残っていて、リョウのかわいい姿に次第に切なくなってきます。そして最後の梅佳代さんの言葉。目頭が熱くなります。

 

リョウと梅佳代さんにそこまで深い絆があったわけではなかったようなので、荒木さんの「愛しのチロ」を引き合いに出すと言い過ぎになるかもしれませんが、同じく写真というもので生き物の切なさを表現している名作だと感じました。こんな方向も出せるとは…。

 

ほぼ日にこの写真集についてのインタビューが載っています。

白い犬。〜梅佳代さんちの「あのこ」のこと〜

はい。完全にいつもの梅佳代さんです。

 

 

 

 

ディック・ブルーナ

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2017年2月16日にディック・ブルーナが逝去されました。

その作品と同じように穏やかそうで笑顔が素敵なオランダのおじいちゃん。偉大すぎる存在ですが、ミッフィー展で公開されていた動画では作品作りのアイディアで苦しむし、神経質にもなる、とも語っていました。

 

 

シンプルな線と色が特徴で一見簡単そうに見える絵本たち。しかし制作方法は手が込んでいます。

 

1.まずトレーシングペーパーに下絵を描きます

 

2.その下絵を水彩用の厚い画用紙の上に重ね、かたい鉛筆でなぞります。トレースした線は画用紙に凹みとして残ります。

 

3.その跡を絵筆を使って黒いポスターカラーで少しずつなぞっていきます。筆跡と画用紙へのにじみがあたたかみのある輪郭線になります。

 

5.その原画をオフセット印刷用のポジフィルムに焼きます。

 

6.ポジフィルムの上に絵本サイズのフレームを重ねてレイアウトを決めます。

 

7.レイアウトが決まったら、その位置でフィルムをはさみで切ります。

 

8.絵の各部分にあわせて色紙を選びます。再び1のトレーシングペーパーで色紙に跡をつけてカットし、フィルムの下に敷いていきます。

 

9.できあがった絵を反射原稿として印刷所に入稿します。

 

10.原稿と刷り上がりをチェックして完成です。

 

なぜ下絵をトレーシングペーパーに描くかというと、それをなぞって何度も使えるからです。うさこちゃんの顔は単純ゆえに目の位置がほんのちょっとずれただけで違う表情になります。納得いくまで描き直して完成した下絵は絶妙なバランスで成り立っているのです。

 

この凹みをなぞる線の描き方はシンプルな線に手触り感やあたたかみを表現できる方法として多くのイラストレーターに影響を与えました。

手で描く線とCGのパスをラフに加工するのとでは違いが感じられます。しかし技術というのは進歩するものなので、そのうちコンピュータでも手描きと同じような表現が簡単にできるようになるでしょう。手に取るものが手作りなのかコンピュータなのか見分けがつかなくなった時、手法の選択は作り手側に委ねられます。

簡単にできる方を選ぶか、作っていて楽しい方を選ぶか、です。

 

 

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仲條正義 IN & OUT, あるいは飲&嘔吐

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2017年1月13日(金)—3月18日(土)

ギンザ・グラフィック・ギャラリー

 

仲條正義さんの作品を見るといつも救われた気分になります。そうだ、デザインはわくわくするものなんだ、と。世の多くのデザイナーに勇気と希望を与えているのは間違いないです。

 

仲條さんはデザインに「不可解な一点を加える」そうです。

子どもの行動を見ていると気づくことがあります。

大人が隠しているものを見つける。行って欲しくない方向へ行く。さわって欲しくないものをさわる。突起物が気になる。

これらに共通することはつまり「好奇心」です。人間の根本の欲求として、見たことがないものを見たいんです。なんだろう、変だぞ、と感じたものに興味を持つんです。

そんなのはあたりまえだと思いますか。では仕事になるとどうでしょう。

変なものはどんどん排除されていきます。全てをわかりやすく説明(説得)できるものにしていきます。とがった部分は均されてフラットにされます。世の中にすでに出回っているものに似せて安心します。会議を重ねて整合性をとるうちに、わくわくするものからは遠のいていくんです。

 

「見たことのないものは、きっと素晴らしい。」

大切にしたいです。

 

 

同じく仲條さんの言葉を紹介します。

「デザイナーの悲しみは鈍重で不愉快で、ゴミに集まるハエみたいな状態である。」

吹き出しますね。デザイナーのみなさん、機嫌よくいきましょう。

 

 

 

フィンランド・デザイン展

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2017年1月14日(土)—3月20日(月)

福岡市博物館

 

生活空間を見渡すと意外に多くの北欧・フィンランドのものに囲まれています。
フィンランドという国に憧れを抱いていたわけではなく、いつの間にかモノそれ自体が持つデザインの魅力に惹かれ手にとって来たように思います。
世間が「北欧」という言葉を意識しはじめたきっかけははっきりしませんが、映画「かもめ食堂」の頃からだとしても、もう10年以上前。一過性のものではなくひとつのスタイルとして定着したと言えます。

 

フィンランド独立100周年を記念して開催されているこの展覧会。フィンランド・デザインの歩みをデザイナーごとに紹介し、そのデザインの背景には自然と深く関わりあうフィンランドならではの生活があったことを明らかにしてくれます。

 

カイ・フランクのテーブルウェアが単色なのは、セットとして買うのではなく家庭で昔から使っている食器に1枚ずつ買い足していけるようにと使い方に自由度を与えるため。誰にでも使いやすく、どんな家にもなじみ、収納しやすいデザインを追求しています。美しく、質が高く、機能的な実用品という姿は、柳宗悦の民藝の考え方そのもので、これもフィンランド・デザインが日本で広く愛されている理由かもしれません。
一日中暗くて厳しい寒さの冬を乗り越えるために、伝統的なルイユやマリメッコのテキスタイルのように大胆な柄や明るい色使いのデザインが必然であったという話も頷けます。

 

モダニズムの影響を受けつつも柔らかくあたたかみを残しているのはフィンランドが自然と人間との調和を大切にしているから。そして日本で愛され続けているのは、日本が本来持っている同じような文化と共鳴しているからなのだと感じました。

 

 

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