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バルテュス展

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Balthus

2014年4月19日(土)—6月22日(日) 東京都美術館

 

バルテュスを初めて知ったのは、絵ではなく写真でした。それも本人もその絵も写っていない他人の写真。荒木経惟さんが木村伊兵衛さんの写真「本郷森川町」を「バルテュスみたいだね」と言っている記事を見たのが最初です。街路の群像をよく描く画家なのだろうか、というぐらいの印象でした。後にも荒木さんの話には度々バルテュスが出て来たので、なんとなくバルテュスは自分の中で荒木さんとセットになって記憶に残っていました。
今回バルテュス展を見て、さらに荒木さんとの結びつきが強くなりました。バルテュス作品に繰り返し登場する少女、そして猫。バルテュスは少女について「これから何かになろうとしているが、まだなりきっていない。(略)この上なく完璧な美の象徴」と語り、「猫ばんざい! 壁にとどまり、傲岸不遜な皮肉をもって、人間が精神錯乱のように悪い振る舞いをするのを眺めよう」と猫を称えます。荒木さんはバルテュスと同じ目で少女と猫を見つめているのではないでしょうか。秋桜子やチロの写真を思い出しました。

 

さて、少女のヌードなどのモチーフでスキャンダラスな面で注目が集まったりもしたバルテュスですが、回顧展を見るとそういうものは単なる一面にすぎない事がわかります。鑑賞者を作品と一体にするためにイメージを暗示させる方法。シュルレアリスム全盛期に具象絵画に真摯にこだわり続けた姿勢。光の質感を表現するマティエールの追求。膨大な習作を制作し、モデルのポーズやフォルムを洗練し幾何学的に画面を構成。解説では具象/抽象の区別を超えた絵画をバルテュスが創り出そうとしていた、とありますがまさにそのような印象を受けました。写真家たちがバルテュスに惹かれるのも、そこに理由があるのかもしれません。

 

 

Stork house 藤森照信建築と「鸛庵」

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藤森照信

2014年4月26日(土)—5月25日(日) 三菱地所アルティアム

 

今いちばん気になる建築家です。
屋根にタンポポが生えている「タンポポハウス」、屋根にニラが生えている「ニラハウス」、6メートルの木の柱の上に立つ「高過庵」、ワイヤーで空中に浮かぶ「空飛ぶ泥船」、そして本展の主役、屋根の上にコウノトリの巣が乗っかった「鸛庵」…藤森さんの建築はどれも笑ってしまうぐらいユニークです。
まるで子どもの空想をそのまま形にしたよう。ですが藤森さんは元々歴とした建築史家で実際に建築をやり始めたのは43歳からとのこと。アカデミックな経歴を考えるともっとカッチリとした建築をやるのではないかとイメージしてしまいますが、逆ですね。中途半端に知っている人ほど伝統や定石に囚われがちです。知り尽くしているからこそ、同じものをやったり形だけの様式を模倣することを恥ずかしい事だとわかっているのだと思います。
作品はどれも建つ土地に自然と調和しています。けれど無国籍で独創的で大らか。そしてとにかくかわいい。かわいいという評価はあまり嬉しくないそうですけど。展覧会では、自ら施工に参加して曲面ガンナで木を削り、壁用の板を燃やすようすが上映されています。楽しそうでこちらも笑顔になります。