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古民家再生

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株式会社カグヤさんは未来の子どもたちのために遺すべき日本の暮らしについて取り組んでいます。今年から古民家再生も始めました。

 

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この建物、元々は旅籠で、個人の住居、食事処、そして呉服屋と今に至るまでさまざまに活用され増改築されたようで、建物を引き受けた時にはあちこち不調和なことになっていたそうです。

京町家の主人からのアドバイス、日本家屋に詳しい大工の棟梁の協力、桶職人、畳職人、い草農家との出会いを経て、本来のあるべき姿へ再生が始まりました。荒れていた庭木を整え、つやつやのフローリングをはがし、コンクリートの壁を木に戻し、沈んだ柱をジャッキで持ち上げ、国産い草の畳を入れたりといたるところに相当な手間がかかっています。当初は「ここで寝るのはチャレンジングだぞ」と思いましたが、今やすっかり美しく快適な空間になっていました。当主がよく言う「家が喜んでいる」という表現がぴったりです。

 

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実際に過ごしてみると、畳のい草の香りを感じ、かまどからのいいにおいが漂い、戸を開ければ庭から澄み切った風が部屋に入って来るというように、日本の古民家には芳香剤など全く必要ないのだとわかります。使い込まれ磨かれた木は障子を通ってくる光にやわらかく輝きなんとも言えず心が静まってきます。日本の漆器の美しさは、ぼんやりした薄明かりの中に置いてこそ、始めてほんとうに発揮される。まさに谷崎潤一郎の陰翳礼讃の気分。

 

囲炉裏を囲むことも、かまどで炊くご飯も、木の桶で入る風呂も、かつてはあたりまえに日本の家にあったものなんでしょう。今は古い旅館や料亭に行き高いお金を出して体験しているというのはなんだか皮肉なものです。かくいう私も便利なだけの普通のマンション住まいです。

高気密・高断熱住宅と聞くと暖房冷房がロスなく効いて省エネなイメージを持ちがちですが、高温多湿な日本では結露がひどくカビが発生しやすくなります。日本家屋の材料に木と草と土を使うのは家に呼吸をさせるためで、昔の日本人はそれを知っていたんですね。囲炉裏の煙は建材を強くし、防虫効果もあります。白川郷や京都府南丹市美山町などに残る茅葺屋根も昔は50年は持つと言われていたそうですが囲炉裏がなくなってからは15〜20年ぐらいだそうです。

 

以前の記事でも似たようなことを書きましたけど、安易な改良というものには気をつけないといけないなと改めて感じます。簡単に「こっちの方が理にかなっている」と言いますが、その理とはどの範囲のことなのか。今だけ表面だけ狭い範囲のことじゃないのか。ものづくりに関わる自分自身、先人たちの知恵の積み重ねにはもっと敬意を表すべきだと思うわけです。