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壊れやすいデザイン

YES

製品の特徴で「壊れやすい」というのは一般的に欠点と捉えられるわけですが、そこだけに注目して改良をするとその製品の良さが失われてしまう恐れがあります。

 

例えば繊細なワイングラス。形状にはワインを味わうための理由もありますがそれはさておき、とにかく壊れやすい形です。薄いボウル部分は何かに軽くぶつけただけで割れるし、脚も細くポッキリ折れそうです。背が高くて重心が上にあるぶん倒れやすいというのもあります。

 

では改良するために割れにくい分厚いガラスにしましょうか。脚もちょっとやそっとじゃ折れないように極太にするか何だったら無くしちゃいましょう。カップ酒ですね。雰囲気台無しです。では薄くても割れない強化ガラスで・・・
いやいや、ここで言いたいのは「壊れやすい」というのもひとつの機能だということです。

 

割れやすいから優しく扱う。倒れないようにゆっくり、そっと置く。
「壊れやすい」と意識することで自然とそこに上品な人間の所作が生まれているわけです。エレガントな振る舞いが求められる食事のシーンにはピッタリです。
着物もそうですね。大股で歩きにくいというのはこの場合マイナスではないんです。
これらはある意味、人間の美しい振る舞いをデザインしているとも言えます。

 

わかりやすい例を挙げましたが、これは何にでも言えることです。
あらゆるものを人間が使いやすいように、楽できるように、あるいは壊れにくいように、コストがかからないように、改良していく先にあるのは何でしょうか。便利で安価で安全だけど味気なくダサいものとガサツな人があふれている世界が想像できます。
欠点だけで一面的に判断せずに隠れている価値や機能を見つけられる目を持ちたいものです。
そしてそれを評価して時と場合で使い分けることでもっと味わい深い生活になっていくんじゃないでしょうか。

 

「文字が小さい」=「読みにくい」
じゃあ文字を大きくすればいい、という単純なことではない場合もあります。
そこには何かしらの意図や人の方を動かす演出が潜んでいるのかもしれない。
デザイナーはクライアントに積極的に説明していくべきだと思います。
デザインに対する多面的な判断を共有できれば、もっと自由で深い表現ができるはずです。