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井上直久 イバラード

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井上直久さんは広告代理店勤務後、美術教諭、大学教授を経て現在はフリーのイラストレーターという経歴の持ち主です。ジブリの「耳をすませば」のワンシーンに背景画を提供されていたので知っている方も多いと思います。ちょっと作品を見る限り、ファンタジーなインテリア・アートかな、なんて印象を受けるのですが、実は全く違います。

井上さんの絵画は、1作品ごとになんとなく思いついたものを描いているのではなく、全て「イバラード」という架空の国を描いています。イバラードの世界は、地形、植物、人々、生き物、建造物、乗り物、そして魔法と非常に細かいところまで設定しつくされています。(上の絵の中に描かれている人物やカエルたちも名前があります)なので絵画作品は、ある意味脳の中にすでに存在する風景をいろんな位置からカメラで切り取る行為に近いのかもしれません。

 

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コミックス「イバラード物語」では、なんとも不思議なイバラードの世界の中で、いきいきと暮らしているキャラクターたちの様子が描かれています。その世界の中での決まりごとをさも当たり前のように違和感なく見せる手腕に長けていて、宮﨑駿さんの漫画の描き方に共通するものを感じます。宮崎さんもイバラード物語を気に入って何度も読まれていたそうで、お互い刺激しあう仲なのでしょうか。

 

イバラードという名前は宮沢賢治が岩手県をイーハトーブと呼んだことにちなんだものらしく、居住地の大阪府茨木市だそうです。イバラードの近隣にはスイテリア(吹田市)、タカツング(高槻市)という都市も存在します。

日々目にしているものでも名前を変えて見方を変えればすごく不思議なものに見えてくると。それがわかれば生きてることが面白くて仕方なくなると。素敵な考え方ですね。

 

12月9日まで渋谷のBunkamura Galleryで展覧会も開催されています。井上さんの絵画を見たことがある方も、イバラード物語を読んで設定を頭に入れてから、あらためて絵を見てみると……イバラードの住人になれます。