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流動体について 小沢健二

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いまさらですがiTunesのおかげで古いレコードやCDを引っぱり出す事なく、どの時代の曲も同列に簡単に聴けるようになりました。現在のヒットチャートには疎くなり、なつかしのアーティストばかり聴いています。小沢健二もその中の一人でしたが、なんと約20年ぶりに新曲とともに表舞台に帰ってきました。

発売日当日にCDを買いにでかけたのは久しぶりです。そして期待通りの曲でした。

 
「もしも 間違いに気がつくことがなかったのなら?」
あの時あの彼女と別れてなかったなら? 並行世界の自分はどんなふうに暮らしているのか。過去の恋愛を甘酸っぱく振り返るような内容。しかしそれだけじゃない様子。歌詞には出てきませんが震災や原発のことも含む大きなことを言っているように聞こえます。中盤以降の言葉を見ると、歌で何かを変えるために帰ってきたんだろうなと深読みさせられたり。しっとりした曲調よりアップテンポに切ない歌詞がのっているほうが心を揺さぶられますね。

 
4月号のGINZAは「音楽の神様がファッションに舞い降りる時」。ファッションと音楽の関係についての特集でトップの記事を小沢健二が書いています。
ファッションというよりデザインについてとても良いことが語られていました。ちょっと紹介しますが、興味のある方はぜひ買って読んでほしいと思います。
この「流動体について」の生産限定版ジャケットは紙。もしもプラスチックのCDケースが存在しない世界だったら? 歌の内容と同じくジャケットでも「もしも」の世界を表現しているとのこと。デザインも本人がイラレを使ってやっています。「僕のイラレの技術はパンクバンドのギター・テク程度。でも、パンクバンドにしかできない音楽もある。」完全に同意だし例えが的確です。技術的におかしいところはないですけどね。

 

小沢健二は、もしもの世界を見せる事で、今あたりまえだと思っているものの「変」なところに気づかせようとしている気がします。
CDケースのように、構造や素材に問題があっても変更するとその他いろいろなコストがかかってしまうことを理由に生き残り続けてしまうデザイン。街にあふれる看板やスマホに飛び込んでくる大量のバナー広告のように、受け手の意思は考えずに、大きく見やすく人の眼に飛び込ませようとするデザイン。

 

“その世界の人たちは「見えにくいデザインこそ、見るのが愉しい」という美感を持っているのだ。だから、その生活空間は「眼に飛び込ませようとするデザイン」で溢れていない。視的空間は静かで、人々は見えにくいものを、自分の意思で見る。それが愉しいから。”

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