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ラムネ温泉館

藤森照信さんの建築物は九州にもあります。知っているのは3つ。まず福岡の一本松ハウス。実はウチの近所にあるんですが一般の方のお住まいなので中を見せてくれというわけにはなかなか……。2つ目、熊本県立農業大学校学生寮。ここも部外者がノコノコ入れるところではなさそう。3つ目が大分県竹田市のラムネ温泉館。ここは公衆浴場なのでたっぷり満喫できます。ラムネ温泉は名前の通り炭酸を含んだ温泉で高血圧症、冷え性、疲労回復に良いとか。行って参りました。

 

 

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あった!と言うより、いたー!と言いたくなる建物。

休日ということもあったのでしょうが、駐車場は満杯。かなり盛況のようです。来られている方の話しぶりから藤森建築目当てというよりもラムネ温泉目当ての方がメインのようです。そりゃそうか。

 

待合美術館棟 受付、待合室、手前と二階は美術館になっています。

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家族湯棟 家族でゆったりできるらしい。人気で順番待ち。

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ラムネ温泉棟 左右で男湯、女湯に分かれています。

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壁は焼杉と漆喰。焼き焦がした表面の炭素層で耐久性が増します。間の漆喰は木材の歪みを吸収する役割。見た目にも白黒のリズムで軽くなっていいですね。

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屋根材は銅板。手で曲げているらしい。

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それぞれの屋根のてっぺんには松が生えてます。かわいい。松は長寿のシンボル。

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待合美術館棟ベランダから。ラムネ温泉棟へは小道でつながっています。生えているのは笹。

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笹の小道を走る子ども。

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まわりはこんな感じ。のんびりとしたいいところです。笹の中に佇んでいる犬人間は、辻畑隆子さん作オンリーワン。

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お風呂の写真はさすがに撮れなかったんですが

浴室へは背を屈めて茶室のにじり口のような小さな扉から入ります。ここの施主が子どもの頃ラムネ温泉に入る時は炭酸ガス中毒にならないようにローソクに火を灯してお湯に浸かり、火が消えたら風呂から出るようにしていたと。それを藤森さんが聞いて「狭い空間に火が持ち込まれて湯が立つ空間といえば茶室」と設計のヒントにしたらしいです。
浴室内は漆喰の壁に真珠貝が散りばめられていてまさにラムネの泡のようです。暖炉もあります。浴室内には3種ありまして、高温汗室(サウナ)→32度のラムネ温泉→42度のにごり湯、という順に入ると良いとか。ラムネ温泉は肌に泡がつく程度かなと思っていたんですが、いい具合に炭酸のプチプチを感じるレベルです。温度が高いと炭酸が抜けてしまうので32度なんでしょうか。冬は寒いかも。

 

 

待合美術館棟の模型らしきものと嵐山光三郎さんの句碑。

青蛙露天のふちに眠りおり

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シンボルマークのアートワークは南伸坊さん。路上観察学会つながりですね。

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また行きます。

 

 

 

ジブリの立体建造物展

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スタジオジブリ

2014年7月10日(木)—12月14日(日) 江戸東京たてもの園

 
ジブリ作品では建造物が登場人物と同等の存在感を放っています。
自分にとってはジブリ映画の楽しみの半分ぐらいは建造物や背景美術かもしれません。

 
そんなわけでこの展覧会、あまり下調べせずに行ってみたのですが、監修がなんと藤森照信さん。好きなものや興味があるものが糸でつながっていくのはなんだか嬉しいものです。
藤森さんは建築史家で建築家なので専門家の視点でジブリの建造物を解説されているんですが、これが面白い。
例えば現在公開中の「思い出のマーニー」について。物語の舞台は北海道なんですが、主人公が療養に訪れる家の壁は「下見板張り」という洋館によく見られるスタイル。この下見板張りが日本に最初に入ってきたのがまさに北海道らしいんですね。明治政府が北海道開拓の時にアメリカから顧問団を招いてアメリカ開拓時の技術を導入したらしく、その時に入ってきたそうです。
家の壁ひとつにしても適当に描いていないんですね。しっかりと現地でロケハンをやってディテールにこだわっている。
他にも、時代考証的な話、構造に関する話、作品によく登場する炉・竈が持つ意味など興味深い話が多く語られています。藤森さんの解説のおかげで、ジブリがいかに徹底的に観察・想定をして建造物をデザインしているかを理解することが出来ました。

 
展覧会を見て感じたのはジブリの「描く責任」ということ。
ジブリのアニメーションで建造物を描くという行為は、ある意味実際に作る建築家に次いで、建造物の事を考えていなければいけないのではないか。

どういう土地だったからこの建材を使ったのか、どんな時代だったからこの建築スタイルになったのか、どういう生活だったからこの間取りになったのか、そういうリアリティがあってはじめて、架空の世界に命が吹き込まれ、人物たちがいきいきと動き出すのだと思います。
そしてこの建造物と登場人物の関係性は、現実の世界と同じです。
子どもたちに何かを感じてもらう作品にするためにはこの「描く責任」を持ってやる。
これこそがジブリのアイデンティティになっているのではないでしょうか。

 

 
展示は背景画の他にもイメージボード、設定画に迫力のジオラマもあって見応え充分です。これが入園料の400円で見られるなんて!(中学生以下無料!)

この後、江戸東京たてもの園をまわりましたが、ジブリ作品に出てきそうな建物がたくさんで二度美味しいです。

 

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武相荘

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都心から電車を乗り継ぎ1時間、静かな住宅地の中、こんもりとした木々に囲まれ佇む茅葺屋根の農家。

この武相荘(ぶあいそう)は白洲次郎・正子夫妻の旧邸宅です。

夫妻が亡くなった後、2001年から記念館として一般公開され生前の暮らしそのままに、居間、書斎、家具、器などが展示されています。元々は養蚕農家の民家だったものを買い取って少しずつ手を入れたらしいです。
名前の由来は武蔵と相模の境にある地に因んで、そして次郎独特のユーモアで無愛想とかけて名づけられたとのこと。

 

素晴らしく心地よい空間です。延々と眺めていられます。

様々な土地や国から集められたであろう品々も二人の審美眼を通して統一されるのか何ひとつ違和感なく古民家に調和しています。

私は囲炉裏の木枠がとても気に入ったのですが、これも元からあったものではなく他所から手に入れわざわざ組み込んだらしいです。隅々にまでこだわりが感じられ、それでいて少しも肩肘を張っていないように感じます。

ものづくりにおいての本質に気付かされるような美意識にあふれる場所でした。

 

 

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雪の女王

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「アナと雪の女王」がヒットしていますね。実は観ていないんですけど。
ここで紹介するのはアナ雪じゃない方のアニメ「雪の女王」です。

 

1957年(!)のソ連時代のロシアアニメーション映画です。監督はレフ・アタマーノフ。宮崎駿、高畑勲監督たちに大きな影響を与えたことで知られるこの作品。三鷹の森ジブリ美術館ライブラリーでDVD化されています。

 

幼なじみでとても仲良しの少年カイと少女ゲルダ。いつも一緒に楽しく暮らしていたが、ある晩カイが雪の女王に目をつけられ魔法で冷たい性格に変えられてしまう。別人のようになったカイに意地悪をされても離れようとしないゲルダ。しかし雪の女王はカイをゲルダの元から連れ去ってしまう。たった一人カイを探しに旅に出るゲルダ。カイを見つけ出し取り戻すことができるか……
というストーリーです。

 

半世紀以上前の作品なのに、光や自然の表現が美しく、アニメーションの動きがとてもなめらかで驚きます。ディズニーと同様に実写の動きをトレースしてアニメーションを作る「ロトスコープ」という手法を使っているようですが、ディズニーのちょっと大げさに見せる動きとは違って、人も動物たちの動きも本当にリアルです。
人物の顔はアニメのキャラクターとしては地味に見えますが優しい印象で好感が持てます。この下睫の線を描かない目の描き方というのを宮崎監督たちが倣って日本で始め、今では日本アニメの主流になっているそうです。

 

作品を貫くとにかくカイを見つけるんだという主人公ゲルダの真っ直ぐな想い。ナウシカ、シータ、ソフィー、ポニョ、宮崎作品のヒロインみんなが持っているひたむきさはゲルダが原点になっているのだと感じました。
旅を続けるゲルダを囚えた山賊の娘も、ゲルダのカイへの熱い想いに心を動かされ、ゲルダだけでなく捕らえていた動物たちを次々に解放します。強がって憎まれ口を叩いていた山賊の娘は、本当は心からの友達が欲しくて寂しかったのだと気づいて泣き崩れます。それを見て逃げ出さずに娘にそっと寄り添う動物たち。心を打つシーンです。宮崎監督もここがこの映画の頂点だと語っています。

 

「白蛇伝」を観てアニメーターをめざし「雪の女王」を観てアニメーターになって良かったと思ったと宮崎監督に言わしめた作品。傑作です。

 

 

バルテュス展

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2014年4月19日(土)—6月22日(日) 東京都美術館

 

バルテュスを初めて知ったのは、絵ではなく写真でした。それも本人もその絵も写っていない他人の写真。荒木経惟さんが木村伊兵衛さんの写真「本郷森川町」を「バルテュスみたいだね」と言っている記事を見たのが最初です。街路の群像をよく描く画家なのだろうか、というぐらいの印象でした。後にも荒木さんの話には度々バルテュスが出て来たので、なんとなくバルテュスは自分の中で荒木さんとセットになって記憶に残っていました。
今回バルテュス展を見て、さらに荒木さんとの結びつきが強くなりました。バルテュス作品に繰り返し登場する少女、そして猫。バルテュスは少女について「これから何かになろうとしているが、まだなりきっていない。(略)この上なく完璧な美の象徴」と語り、「猫ばんざい! 壁にとどまり、傲岸不遜な皮肉をもって、人間が精神錯乱のように悪い振る舞いをするのを眺めよう」と猫を称えます。荒木さんはバルテュスと同じ目で少女と猫を見つめているのではないでしょうか。秋桜子やチロの写真を思い出しました。

 

さて、少女のヌードなどのモチーフでスキャンダラスな面で注目が集まったりもしたバルテュスですが、回顧展を見るとそういうものは単なる一面にすぎない事がわかります。鑑賞者を作品と一体にするためにイメージを暗示させる方法。シュルレアリスム全盛期に具象絵画に真摯にこだわり続けた姿勢。光の質感を表現するマティエールの追求。膨大な習作を制作し、モデルのポーズやフォルムを洗練し幾何学的に画面を構成。解説では具象/抽象の区別を超えた絵画をバルテュスが創り出そうとしていた、とありますがまさにそのような印象を受けました。写真家たちがバルテュスに惹かれるのも、そこに理由があるのかもしれません。