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君たちはどう生きるか

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今年の2月、宮崎駿監督が引退を撤回し長編映画の制作に復帰したことを公表。ハヤオフリークの私としては「そうなるでしょうな」と何の疑問も驚きもなく素直に歓迎しました。

そして10月、制作中の新作タイトルが「君たちはどう生きるか」になることが判明。吉野源三郎が1937年に発表した作品の映画化、ということではなく、この本が映画の主人公にとって大きな意味を持つということらしい。ハヤオフリークの私としては「読みましょう」となるわけです。

 

主人公は中学生のコペル君こと本田潤一。コペル君というのはあだ名でその名を付けたのは母の弟で法学士の「叔父さん」。コペル君と叔父さんのやりとりを中心にストーリーが展開されていきます。

この本が発表された80年前の日本といえば軍国主義が勢力を強めていた時期。時勢の悪い影響から少年少女を守りたい、次の世代を担う子どもたちへ偏狭な国粋主義や反動的な思想を越えた、自由で豊かな文化があることを伝えておかねばならない、との想いで記されたものだそうです。

 

道徳や倫理の話を「こういうことが正しいんだ。だからこうしなさい」と一方的に子どもに伝えても「ほーん」と聞き流されたり、従ったとしてもなぜそうしなければいけないのかという本質の部分が希薄になりがちだと思います。この本がすばらしいのは倫理の話を興味深いストーリーとして描き、叔父さんの自然哲学を交えた例え話で子どもにも理解しやすく腑に落ちるように表現してあるところです。いや、語弊があります。この本は目的ありきで書かれたとは思えないほどエンターテインメントです。コペル君の気持ちにリンクして物語にグイグイ引き込まれていきます。「面白い話だった。結果として倫理についての話だった。」という説明のほうが正しい。

 

宮崎監督が次回作をこのタイトルにした意味はよくわかりました。毎回作品の内容は変わっても一貫して言い続けているのはこのことなんですよね。

子どもが大きくなったら宮崎作品とともにこの本を薦めたいと思います。