DESIGN NO MORISHITA NO BLOG LOGO

鈴木理策写真展 意識の流れ

_DSC4343

2015年7月18日(土)—9月23日(水・祝)

東京オペラシティ アートギャラリー

 

鈴木理策さんの個展を拝見するのは初めてでした。

8×10の大型カメラで撮影され、特大の印画紙に引き伸ばされた写真。浅めのピントで風景の中のどこかにフォーカスが来ているのですが、

「あれ……別にここを見せたいわけではなさそうだ」と気づきます。

通常はピントが来ている部分が主題と感じるはずなのですが、この方の写真はそうではなく、どこを見てもいいようになっています。言わば全体が等価値。

 

ニューカラーと言われる写真では大型カメラで絞りを絞って画面の隅々までピントが来るようにする。それによりピークがない写真になり、全体が等価値になる。と記憶していたのですが、浅いピントでも写真全体が等価値に感じられるのは不思議です。

大判フィルムの圧倒的な情報量と大画面も手伝って、実際にその場所に自分がいるかのような目の動きになります。その際に、ピントが合っている部分、あっていない部分が、見ているのに意識がオンとオフを繰り返すような新鮮な体験をさせられる、といった感じでしょうか。

「何が写っているか」、よりも、「見るということ」を考えさせられる写真です。

 

_DSC4351

会場に展示されていた言葉。まさにこれですね。

鈴木理策さんはフレーミングを気にせず、ある場所にピントを合わせたら、風や音や光をきっかけにシャッターを押すとのこと。

じっくり構図を決めて、シャッターチャンスを待って撮られた写真は、撮影者と写真を見る人とのコミュニケーションもその一点だけになってしまうから、だそうです。

 

自分の頭の中で、見るということはどういうことなのかを考える、そして視点を発見する、ということもすごいのですが、それを他人にも体験させるために、どのような手法でどのような写真を撮ればいいのかを編み出し実現できるというのは、もうある意味科学と言えるかもしれません。驚嘆します。